研究メモ Vol.2 国家資格なのに、なぜ美容師の価値は低いと言われるのか?

美容師の価値

まず最初に、私は一つ疑問があります。

美容師は国家資格です。

それにもかかわらず、

「国家資格なのに給料が安い。」

「資格の価値が低い。」

そんな言葉を耳にすることがあります。

私は、そのことを不思議に感じていました。


合格率80%は「簡単」という意味ではない

美容師国家試験の合格率は、例年80%前後で推移しています。

この数字だけを見ると、

「取りやすい国家資格」という印象を持たれることがあります。

こうした印象が、「美容師資格の価値が低い」と言われる理由の一つなのかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか。

美容師国家試験では、技術だけを学ぶわけではありません。

養成施設では1,410時間以上の課程を修了する必要があり、

・美容実習(900時間以上)
・衛生管理
・感染症や消毒
・人体や皮膚・毛髪の構造
・香粧品化学
・美容の歴史や文化
・美容師法や公衆衛生、サロン運営

など、美容師として安全に施術を行うための知識も幅広く学びます。

お客様には見えない部分ですが、美容師は技術だけではなく、人の身体に関わる専門知識も身につけたうえで国家試験に臨んでいます。

つまり、

努力を積み重ねた人たちの中で約80%が合格している。

という数字であって、

「誰でも簡単に取れる資格」

という意味ではないと思います。


それでも、平均年収は高いとは言えません

美容師の平均年収は、およそ370〜390万円前後とされ、全産業平均と比べると低い水準です。

この低い平均年収も美容師資格の価値が低いとされる理由の一つかもしれません。

一方で、その内訳を見ると大きな差があります。

  • アシスタント:約150〜290万円
  • スタイリスト:約300〜350万円
  • 店長・チーフ:約350〜450万円
  • トップスタイリスト:約400〜600万円以上

さらに、

  • 業務委託
  • フリーランス
  • シェアサロン
  • 独立

など、働き方によって収入は大きく変わります。


では、なぜ価値が低いと言われるのでしょうか。

資格の問題ではなく、

美容業界の働き方や仕組みに理由があると思っています。

長時間労働。

アシスタント時代の低賃金。

離職率の高さ。

こうした業界の課題が、

美容師という職業そのものの価値まで低く見せてしまっているのではないでしょうか。

人の人生に寄り添い、

国家資格を取得し、

一生使える技術を身につけた仕事なのに、

なぜ「価値が低い」と言われてしまうのか。

そこには、まだ考えるべきことがたくさんあるように思います。


価値は育てるものなのかもしれない

もしかすると、本当に見直すべきなのは資格そのものではなく、美容師という仕事を取り巻く環境や働き方なのかもしれません。

美容師は、経験や技術を積み重ねることで収入が上がる仕事です。

トップスタイリストになれば年収は大きく伸びますし、独立して成功している美容師さんもたくさんいます。

でも、その一方で、そこへたどり着く前に辞めてしまう人が多いのも現実です。

私は、この仕組みが今の時代に本当に合っているのか、

そんなことを、ずっと考えてきました。

今は、美容師免許を活かせる道は一つではありません。

スタイリストだけではなく、メイクやネイル、アイラッシュ、美容ディーラー、美容学校の教員、カラー専門店、シェアサロンなど、働き方の選択肢は昔よりずっと広がっています。

大切なのは、「どの働き方が正解か」ではなく、自分に合った働き方を自分で選び、その中で自分の価値を育てていくことなのではないでしょうか。

その方法も、一つではありません。

SNSで自分の技術や考えを発信し、多くの人に知ってもらう人もいます。

「この人にお願いしたい」と思ってもらうことで、自分自身の価値を高めている美容師さんもたくさんいます。

一方で、SNSを積極的に使わなくても、地域のお客様と何年、何十年と信頼関係を築き、一人ひとりのお客様を大切にしながら美容師を続けている方もいます。

私は、その働き方も同じように価値のあるものだと思っています。

ただ、ここで一つ思うことがあります。

もしかすると、美容師という仕事は「価値が低い」のではなく、その価値を社会に伝える機会が少なかっただけなのかもしれません。

美容師は、技術を磨くことには一生懸命です。

でも、その専門性や責任、国家資格としての重みを、自分たちの言葉で社会に伝えることは、あまり得意ではなかったようにも感じます。

美容師は、自分の仕事を語るよりも、技術で評価されたいと思う人が多い職業なのかもしれません。

一方で、医師や弁護士などは、専門家として社会の中で役割や責任について発信したり、職能団体が積極的に情報を伝えたりする機会があります。

もちろん職業が違うので単純に比較はできません。

それでも、美容師という仕事も、人の身体に触れ、衛生や薬剤の知識を学び、国家資格を取得して初めてできる専門職です。

本来持っている専門性や価値が、社会に十分伝わっていないのではないか。

そんなことを考えました。

そして、その価値を伝える方法も一つではありません。

SNSで発信すること。

地域のお客様と信頼を積み重ねること。

後輩を育てること。

すべて美容師という仕事の価値につながっていると思います。

美容師としての社会的地位も、誰か一人が変えるものではないのだと思います。

一人ひとりが自分らしい形で美容師という仕事に向き合い、その価値を積み重ねていくことで、少しずつ育まれていくものなのかもしれません。

私自身も、まだ答えはありません。

だからこそ、これからも現場で感じたことを重ねながら、歴史やデータを調べ、一つひとつ研究メモとして残していきたいと思います。

この研究メモが、美容師という仕事を見つめ直すきっかけとなり、美容師さん自身、そして社会が、この仕事の価値について改めて考えるきっかけになれば嬉しいです。

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